コミュニティ作りに使えるゲーミフィケーション

今日は「コミュニティ作りに使えるゲーミフィケーション」です。これは、ウォートン・スクールゲーミフィケーション集中講義の書評を兼ねて自分なりにまとめてみた記事になります。ご指摘よろしくお願いします。それにしても、この「ウォートン・スクールゲーミフィケーション集中講義」は、個人的にかなり良書でした。サービス設計や、組織設計など、大きな意味でのコミュニティをドライブさせ得るゲーミフィケーションの基礎知識、具体的なノウハウがしっかりまとめられていたと思います。
僕なりに、この本の要旨を簡単にまとめると、達成したいビジネス目標にゲーミフィケーションの要素を取り入れることが、目標をより効率よく達成するためのアプローチの1つだぜっていう話でした。
では、達成したいビジネス目標にゲーミフィケーションの要素を取り入れ、目標をより効率よく達成するためには、具体的にどういうプロセスを踏めばよいか?という点に関して説明すると、
- ビジネス目標を設定する。
- 対象とする行動を詳しく説明する。
- プレイヤーを詳しく説明する。
- アクティビティのサイクルを考察する。
- 楽しさを忘れない。
- 適切なツールを活用する。
1. ビジネス目標を設定する。
これは、当たり前だけどめちゃくちゃ重要。ゲーミフィケーションを実施することが目的となるケースが非常によくあるからだ。ユーザーを競わせることも、競争を可視化することも、最終目的がしっかり定まっていなければ、どのゲーミフィケーション要素が適切なアプローチになりうるかという点が定まらない。そういう意味で、このビジネス目標を設定することが非常に重要。
2. 対象とする行動を詳しく説明する。
プレイヤーに何をやってもらいたいか、それをどう測定するかに目を向ける。行動とそれを測定する基準はセットとして見なされる。
3. プレイヤーを細かく設定する。(個人的にここは超重要)
このゲーミフィケーションを活用するターゲットはどういう人なのか?をしっかり把握する。プレイヤーが、あるタスクを遂行する可能性を低下させるものについてしっかり考える。そのモチベーションを低下させているのは、意欲の問題(願望の欠如)なのか、それとも力量の問題(能力の欠如)なのか。前者に必要なのは関与重視のアプローチ、後者に必要なのはプレーヤーが徐々にレベルアップしていけるような仕組み。
ただ、ここで注意すべき点は、ターゲットは皆同じではなくしっかりセグメントに分けて、それぞれのターゲットにあった仕組みが必要になる。ここで、少し面白い記述があった。プレイヤーは、達成者、探検家、社交家、殺人者の4つのタイプに分けられるという。(個人的には、それぞれの欲求に重複があると思うが、メインのタイプとして確かにこの4つに分けられるかもしれない笑)
達成者:速くレベルアップしたり、バッジを獲得することが大好きである。
探検家:新しいコンテンツを見つけたいと思っている。
社交家:友人と交流したいと思っている。
殺人者:他の人々に対して自分の意思を押し付けたり、通常は支配しようとする。
最高のゲームはやゲーミフィケーションを使った仕組みは、これらのタイプに訴求する要素を含んでいる。
4. アクティビティのサイクルを作る。
アクティビティのサイクルには、エンゲージメントループと、進捗ステップという2種類がある。
エンゲージメントループ:プレイヤーの行動はモチベーションの結果であり、それを受けて、ポイントを与えるなどのフィードバックを行う。そのフィードバックによって、ユーザーは更なるアクションを取ろうという気持ちが湧いてくる。ここで重要なのは、フィードバック要素。ただ、1回目のループと100回目のループが全く同じであれば大半のプレイヤーは退屈してしまう。これって超大切な視点だなと思いました。そこで重要なのが進捗ステップの出番となる
進捗ステップ:進捗ステップは、プレイヤーがゲームを進めていくに連れて、ゲーム経験が変化することを示している。これは、結構イメージは簡単で、10レベルのピカチュウが11レベルになるのと、60レベルのピカチュウが61レベルになるのを比べると、60→61レベルの方が難しい。この難易度の設定が重要。
また、ランダムな部分を取り入れることも重要。予想外の報酬など、人々はサプライズが好き。人間の脳は、普通程度の報酬を長期的にもらうことで平均すれば、大きな報酬を手に入れる確実性よりも、大きな報酬が手に入るランダムで数少ない気秋の方を好む。
5. 楽しさを忘れない。
このゲーミフィケーションは、本当にこの仕組みを面白くしているだろうか?という点は、絶対忘れてはいけない。
6. 適切なツールを選択する。
これら1〜5のプロセスを考慮した後、この最終目標を達成するには、どのゲーミフィケーションを利用すれば良いのか?ということを考えなければならない。ここで使えるゲーミフィケーションの要素であるダイナミクス、メカニクス、コンポーネントの説明に関しては、「ゲームがあれば、学習はドラックになる。」 ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義の読書メモから引用させてもらった。
ダイナミクス:省略。
メカニクス:メカニクスとは、プレーヤーの行動を前進させ、ゲームに関与させる基本的なプロセスである。重要なゲームメカニクスは10個ある。
コンポーネント:コンポーネントは、メカニクスやダイナミクスよりもより具体的な形をとる。重要なゲームコンポーネントは15個ほどある。
・ダイナミクス
- 制約(限界または強制的なトレードオフ)
- 感情(好奇心、競争心、欲求不満、幸せ)
- 物語(一貫性、進行形のストーリーライン)
- 進歩(プレーヤーの成長と発達)
- 関係性(仲間意識、ステータス、利他的行為を実感させる社会的交流)
・メカニクス
- チャレンジ(解決するために努力が求められるパズルや他の課題)
- チャンス(ランダムな要素)
- 競争(一人のプレーヤー、または一つのグループが勝ち、その他は負ける)
- 協力(プレーヤーは共通の目標を達成するために一緒に働かなければならない)
- フィードバック(プレイヤーの実施状況に関する情報)
- リソースの獲得(有用で収集可能なアイテムを入手する)
- リワード(何らかの行動やアチーブメントに与えられる恩恵、報酬)
- 取引(直接的な、あるいは仲介者を交えたプレイヤー間の取引)
- 交替(プレイヤーを交換し、継続的に参加する)
- 勝利(一人のプレイヤーまたは一つのプレイヤーを勝者にする対象。引き分けや負けの状態は関係概念。)
・コンポーネント
- アチーブメント(定められた目標)
- アバター(プレイヤーのキャラクターを視覚的に表現したもの)
- バッチ(アチーブメントを視覚的に表現したもの)
- ボス戦(特に、あるレベルの頂点における難しいチャレンジ)
- コレクション(貯めるアイテム、またはバッチのセット)
- コンバット(定められた闘い。通常は短期的。)
- コンテンツのアンロック(プレイヤーが目標を達成するとロックが解除され利用可能になるもの)
- ギフティング(多のプレーヤーとリソースを共有する機会)
- リーダーボード(プレイヤーの進捗やアチーブメントの視覚的な表示)
- レベル(プレイヤーの進捗における一定のステップ)
- ポイント(ゲームの進み具合を数字で表したもの)
- クエスト(目標と報酬を伴う、あらかじめ設定されたチャレンジ)
- ソーシャルグラフ(ゲーム内でのソーシャルネットワークを表すもの)
- チーム(共通の目標のために協力するプレイヤーのグループ)
- バーチャル商品(架空の、あるいは実際に貨幣価値のある資産)
このようなゲーミフィケーションの要素を、どの部分にどんな形で付与すれば、全体的なゲーミフィケーション体験が各要素の合計を上回るようになるかを徹底的に考えて、ゲーミフィケーションの設計を行っていく。これが、ゲーミフィケーションデザインの概要になります。
最後にゲーミフィケーションを導入する上で、注意すべき点、メモをいくつか共有。
・ゲーミフィケーションに対する教訓はシンプルである。内発的な基準でモチベーションが湧くかもしれないアクティビティに、外発的動機づけを付与してはいけないということだ。
・人々に何かをやってみようと思わせる仕組みをデザインする手段として、ゲーミフィケーションを捉えてみて欲しい。
・ゲーミフィケーションは、脳の最も原始的な仕組みを越えて活用しなくてはならない。上手くデザインされ、特別な意味合いを持たせたゲーミフィケーションの仕組みであれば、顧客や従業員に本質的で意味のある関与をさせる強力なツールセットとなり得る。
・ユーザーは自分の成績を知りたがる。特定の基準に対する達成度を継続的に把握できるよにして、自分が目標に向かって前進しているというフィードバックをあたえると、プレイヤーにとって励みになる。
・ユーザーは与えられた基準に沿って自分の行動を変える。売上数値ではなく、顧客満足度でフィードバックグループを実施すれば、従業員は月次売上高よりも、顧客満足度を気にし始める。
・PBL(ポイント・バッジ・リーダーボード)
ポイントは過程。ポイントに関して6つの使い方
- 効果的にスコアを記録する
- 勝敗がある場合、買った場合を示す
- ゲームの進行と外的報酬を結びつける
- フィードバックを提供する
- 進捗を対外的に示すことができる
- ゲームデザイナーにデータを提供する
バッジは結果。バッジはユーザーが取り組んでいく目標となり、モチベーションに好ましい効果があることが実証されている。バッジはユーザーができることのガイダンスになり、期待されていることを端的にあわらす。バッジはユーザーが気にかけているところや、実行したことのシグナルである。ユーザーの評価についてある種の視覚的な目印となる。バッジは、ユーザー個人のアクティビティの記録になり、ステータスシンボルや裏付けにもある。バッジはグループの目印として機能し、アイデンティティを与える。
リーダーボードは、もっとも厄介な要素。仲間と比較したときの自分の立ち位置を示すもの。使い方によっては、リーダーボードはモチベーションをことごとく割いてしまう可能性がある。
個人的な感想としては、本当に良書だった。久しぶりにモチベーションというのを改めて考えるきっかけになり、Courseraでゲーミフィケーションの授業を取って以来、しっかりまた体系的にゲーミフィケーションを学ぶことができた。